20代の憂鬱~ハタチ④~
成人式には2つの思い出がある。
1つ、元カレの成人式。
その時、私は元カレと同じ年の彼氏がいた。なーんにも考えず、その彼氏に言われるまま成人式が終わる時間に会場に迎えに行った時のこと。
彼氏を見つけ、一緒に会場を出ようとした時、『ミヤ!!』後ろから声がした。
元カレだった。
気まずい空気が流れる。
何を話したかわからない。
その後、彼氏とどこに行って何をしたかも覚えていない。
1つだけ、覚えていることは元カレを、『元カレ』だと紹介したこと。
その日の帰り、無意識にバスを降りたのは元カレの家の近くだった。
トモダチが集まって飲んでいるだろう賑やかな部屋。
『元カレ』だなんて言ってしまった。会う資格はない。
しばらく部屋の灯りを眺めて、メールを打った。
『おめでとう』
すぐに電話がかかってきた。
『今どこ?会いたい。』
私はいつだってこの人に弱い。
何があったって、誰を傷つけたって、この人を拒めない。
それが自分の弱さであるとともに、強さでもあった。
彼氏と別れたのはその後すぐだった。
2つ、自分の成人式。
久々に会うトモダチの中に小学校の同級生。元気だった?今何してるの?そんな会話の中、『ミヤ、写真撮ろ!!』
智だった。
幼い頃のくすぐったい気持ちを思い出す。放課後、教室で好きな人を教えあった。
『僕の好きな人はね、ミで始まって、ヤで終わるの。髪が長くて可愛いんだ』
『私の好きな人はね、サで始まって、シで終わるんだよ。足が速くてカッコイイの』
あの頃、私より背が小さかったのに今は見上げるほど、見慣れないスーツ姿もカッコイイ。
もう大人の男性だった。
『ミヤはやっぱりキレイだ。だってオレの初恋の人だもの。』
素直に嬉しいと思った。そして、苦しくなった。
私は何をしてるんだろう。
あんなに純粋だった頃もあったのに。
智にキレイだなんて、初恋の人だなんて言って貰えるような人間じゃない。
あの時の写真はまだ現像していない。自分がどんなに酷い顔をしているのか、見るのが怖い。
その夜、強くないくせにお酒を飲んだ。悪酔いして気持ち悪い、トイレで吐きながら頭が急速に冷めていく。
ハタチなんて、大人じゃない。
こんな状況になることを望んでたワケじゃない。苦しいのと気持ち悪いのと…よくわからない感情が込み上げてくる。
ツライ。
何が?
わからない。
20代の憂鬱は始まったばかりだった。