20代の憂鬱~ハタチ~
ハタチ
大学2年生
高校時代全く勉強なんてしなかったお陰で、第一志望の大学は惨敗。
とりあえず受けた、行きたくもない滑り止めの私立の女子大の教育学部に通っていた。
レベルをかなり下げたから学校の授業や試験はヨユー。(実技以外。ピアノはマジ苦痛だった…)
1回り以上上の彼氏がいて、お小遣い稼ぎのために始めた塾講師のバイトも楽しくて、ダダ下がりだった入学当時のモチベーションも上がりつつあった頃、1通の手紙が家に届いた。
消印のない手紙。
元カレだった。
初めての彼氏。好きで好きでたまらなかった。
初めてのデート、初めてのキス、初めての…
全部の初めての相手は彼だった。
あんなに純粋に人を好きになることも初めてだったけど、それが最後だった。
ママが言った。
『実はこの前の雨の日の夜中、けんちゃんミヤに会いたいってウチに来たのよ。びしょ濡れで…
夜中だったし、酔ってるみたいだったから、日を改めてちゃんと会いに来なさいって帰したんだけどね。』
心臓がうるさい。
手紙を受け取り、震える手で開けた。
見慣れた文字。よく上手く伝え切れない気持ちを手紙に書いてやり取りしたっけ。
ミヤ、元気にしてる?
それだけで涙が溢れた。
やり直したい。気持ちに応えてくれるなら、いつもの場所で待ってる。
ずっとずっと好きだった。
好きで好きでたまらなかった。
でも、同じように想って欲しかった。
2つ上の彼は自由だった。
動物占いではペガサス。誰にも何にも束縛されず飛び回る。私はいつも必死で追いかけるしかなかった。
泣いても喚いても一緒にいるためには、耐えて追いかけ続けるしかなかった。
そして、疲れて、疲れ果てて、追いかけるのをやめた。彼は追いかけてはくれなかった。
一緒に過ごした時間がうわーっと蘇る。
赤耳のジーンズ、ジッポの香り、呼ぶ声、そしてギターの音。
ガマン。黒い気持ち。むせ返る香水の匂い。泣きながら帰った道。
あの日の選択を後悔することが、今でもある。
もし、あの日…
置いてきた思い出は2人で優しく包んで いつかまた会ったなら互いに理想な人に
振り向きもしないまま去っていく君の背中を 冷たい陽が差すよ
HY てがみ
あの日、あの場所に私は行かなかった。