20代の憂鬱~21歳②~
その日は、夜中ではなく珍しく朝から会っていた。
仕事終わりの元カレを捕まえて、マックで向かい合っていた。
この時間帯、出勤前のスーツ姿のサラリーマン、軽やかな声で笑い、弾みながら歩く女子高生達、ヒヨコ帽を被りじゃれ合いながら走る子どもたち。
そのいつもの光景をまるで違う世界のように眺めながら、続く沈黙。
彼がタバコに手を伸ばして、やめた。
『どうすればいい?』
私はこの問いに対する彼の答えを待っている。
無言で向かい合うこの状況。
『いらっしゃいませ~』
店員さんの明るい声は不釣り合いだ。
『俺はどっちでもいいよ。』
彼の答えに
『ははっ。』
乾いた笑いが漏れた。
なんだか可笑しくて仕方なかった。『どっちでもいい』か。
なんだか予想外だなー。
でも、らしいっちゃらしい。
そかそか、『どっちでもいい』とか言っちゃうんだ。
選択する余地のない『どっちでもいい』か。
選んだのは私。あなたは何も悪くないよ。ただ、あなたはズルくて弱いだけ。
そんな答え、私はあなたのせいにもできない。ずっと自分だけを責めて生きていくしかないじゃない。
『どっちでもいい』なんて言われるより『堕ろして欲しい』って言われる方がよっぽど良かったよ。
今でも『どっちでもいい』っていう言葉は嫌い。あの日のことを思い出すから。